副業は労働者の正当な権利、副業をする際に憶えておきたい最低限の知識。

政府は副業・兼業を推進する立場

厚生労働省では、「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。

この一文は、厚生労働省のホームページの副業・兼業について纏めたページの冒頭に書かれている文章を抜粋したものです。副業・兼業を促進するためのガイドラインも纏められており、政府として明確に副業・兼業の促進を進めているのです。

副業のニーズはコロナ禍の中、さらに高まりを見せており、ある求人サイトでは副業を含むキーワードの検索回数がコロナ前の5倍にも高まっているといいます。

では、そんな中、実際に副業・兼業が出来る環境にある労働者はどのくらいいるのでしょうか。

下記の表は、経団連が2020年9月に発表した労働時間等実態調査の一部を抜粋したものです。これによると副業・兼業について「認めている企業」は、全体の僅か22%しかないことが分かります。

一般社団法人 日本経済団体連合会 2020年労働時間等実態調査 https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/081.pdfより

政府、労働者が、副業・兼業を進めたいにも関わらず、それを企業側が認めていないという構造が見て取れます。では、副業をしたい労働者はどうすれば良いのでしょうか。

労働時間以外の時間をどのように使おうが労働者の自由

厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインによると、

副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することは出来ない。

とされています。

そもそも、企業側が労働者の副業・兼業について「認める」とか「認めない」などと決める権利は無いのです。経団連の労働実態調査にこのような設問があること自体、いかに経団連がズレた感覚を持っているかが如実に分かるというものです。

しかしながら、副業・兼業をする場合、下記の事項に該当すれば企業側がそれを制限することが出来るため注意が必要です。

①労務提供上の支障がある場合
②業務上の秘密が漏洩する場合
③競業により自社の利益が害される場合
④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

これらの事項に該当する場合は、副業・兼業の制限、または最悪の場合、解雇になる場合もあります。
②~④の事項については、説明するまでも無く、「そりゃやっちゃダメだよね」という事項です。もし、副業をする場合、この4つの項目で一番気を付けなければいけない項目は①と言えます。

「労務提供上の支障がある場合」とは、「副業によって本業の労働に支障が生じる場合」と言い換えることが出来ます。例えば、副業の労働時間が長時間にわたることで労働者の健康に支障をきたし、本業に影響する場合、などがこれに当たると思われます。

またこれは、労働基準法の時間外労働(残業)を規制する36(サブロク)協定に違反するとみなされる場合もあります。

企業側がかたくなに「副業を認めない」背景には、この36協定があると筆者は感じます。もともと36協定は、労働者の時間外労働を制限し、労働者の心身の健康を守るために制定されたものです。社員に時間外労働をさせる場合、予めどの程度の時間外労働をさせるかを企業側と社員とで取り決めを交わし、それを超えないように遵守するものです。

ただし、それは建前であり、ほとんどの企業は36協定で定める時間外労働時間の上限である、月平均45時間以内、年360時間(臨時的な事情がある場合は年720時間)としているのではないでしょうか。これはつまり、この時間までは労働者を「残業させても良い」という免罪符にもなっているのです。

では、労働者が副業をして、例えば他の事業者の下で働いたらどうなるでしょう。実は、この36協定の労働時間が2つの事業者にまたがって適用されるのです。単純に考えるなら、1社の事業所で年360時間「残業させる」ことが出来たのに、副業として2社の事業所に勤めた場合、1社あたりの残業時間が年180時間となり、従来の半分しか「残業させる」ことが出来ないということになるのです。

企業側が労働者の副業を認めない理由の1つは、ここにあるのではないでしょうか。

まずは事業所に属さない副業を

36協定は、労働者を守る協定でもあるので、これに違反するとみなされた場合、残念ながら副業を禁止、あるいは解雇まで発展する可能性があります。ですので、副業を検討される際、他の事業所に属さない副業を検討すると良いでしょう。

具体的には下記のような副業がおすすめです。

▼スキルシェアリング
 ・クラウドワークス
 ・ランサーズ
 ・ココナラ

▼ハンドメイド物販
 ・minne
 ・Creema

▼フリマアプリ
 ・メルカリ
 ・PayPayフリマ

▼その他
 ・アフェリエイト
 ・Youtuber
 ・Uber Eats

上記の副業において共通して言えることは、個人事業主であるということです。
個人事業主であれば、36協定の適用外となり、企業が高々と掲げる「労働者(社員)の心身の健康を守る」ためという屁理屈が通らなくなります。まさに、労働時間以外の時間で何をしようが個人の勝手なのです。上記の副業に対しても禁止してくるような企業があれば、裁判を起こせばまず間違いなく勝てるでしょう。しかし、そのような企業にしがみつく理由もないのかもしれません。

確定申告をする際の注意事項

副業をするのに最も重要なのは納税です。副業による利益が1年間で20万円を超えた場合は、確定申告をしなくてはいけません。これをしないと、今まで挙げた副業を後押しする理由がすべて台無しになり、あなた自身を守る盾を失ってしまいます。
確定申告をする際に最も注意しておきたいのが、住民税についてです。副業の収入により所得が上がると住民税に反映されますが、普通に確定申告をすると、会社で支払われる給与と合算されて翌年の住民税に反映されるので、会社に副業がばれてしまう可能性があります。
今までの理屈から言えば、ばれてもかまわないのですが、余計なトラブルを避けるためにも、確定申告の際に「住民税の徴収方法」の欄に「自分で納付」に丸を付けましょう。そうすることで、副業分の住民税の通知のみ自宅に届くようになりますので、会社に知られることは無くなります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました